建物に係わるありとあらゆる寸法を決定する「モデュール」

モデュールとは、様々な寸法の部材を組み合わせて一つのモノを形にするために、ある寸法の倍数によって全ての部材の寸法を決定する時に基準となる、「ある寸法」のことです。

一般に「モジュール」と表記されることが多いですが、建築の分野では「モデュール」と書くのが一般的だと思います。

英字表記ではModuleですから、モデュールの方が自然な気がしますが、音はモジュールに近いんでしょうか?


日本の住宅においては、畳がモデュールの代表格となっています。

西洋建築におけるモデュールと絡めて、現代にまで息づく尺モデュールについてご紹介します。

西洋建築のファサードに現れた幅と高さの異なる同様のデザインのアーチ構造

モデュールは設計の基準寸法となり、コレはとても便利な代物です。

例えば西洋における古代建築では、円柱状の柱の半径を基準として設計していました。

柱の半径に対して、柱の高さが何倍で、柱間が何倍で、、、と細かく決まりがあったのです。

柱間が広くなればそれだけ太い柱が必要になるという、構造上の制約も自然と満たせましたし、

柱の半径で柱間と柱の高さが決定されるため、平面図を見るだけで出来上がる空間を把握することもできました。

こうしたモデュールの単位は、その土地の文化風土に依るところが大きく、日本において一般的なのは尺モデュールと呼ばれるものです。

「尺(シャク)」というのは長さの単位であり、「メートル」という単位が輸入される以前の日本で広く使用されていたものです。

そして現在でも慣習的に使用されています。

1尺は「33分の10メートル」と定められており、約303mmになります。

なお、「間(ケン)」と「寸(スン)」という単位もあり、「1間=6尺」「1尺=10寸」という関係にあります。

畳の敷かれた和室には、畳と寸法の揃った床の間や障子がある

この尺モデュールを最も身近に感じることが出来るものが、です。

地域差はあるものの、畳の長辺が1間(=6尺=1820mm)、短辺が半間(=3尺=910mm)というのが一般的です。

そして日本の木造住宅の柱は、3尺のグリッド上に配置して設計されることがほとんどでしょう。

キッチンには畳はないが、その寸法は尺モデュールの血を引いている

ただしこの尺モデュールは、時代と共に高身長化してきた現代の日本人にとっては少し窮屈になっています。

グリッドの上に柱を割り付ける設計の場合、実際の幅は柱や壁の厚さを差し引く必要があるので、更に狭くなってしまいます。

そこで3尺=910mmから少し広げて、1m=1,000mmを基準にしたメーターモデュールというものもあります。

しかし、それでも未だに尺モデユールが主流であり続けるのは、それがモデュールだから、といえるでしょう。

冒頭で述べた通り、モデュールとは様々な部材の寸法を決定する上で基準となる寸法です。

床材も、内装材も、外装材も、建具も、家具も、、、ありとあらゆる既製品が、尺モデュールの元に設計されています。

そのため、メーターモデュールの上に設計された建物であっても、実際の室内は尺モデュールに合わせてあることが多いのです。

尺モデュールで設計された既製品によって構成される建物は尺モデュールで設計され、建物が尺モデュールで設計されるために既製品も尺モデュールで設計される。

建築に係わる既製品の点数はまさに膨大です。

その基準寸法が変わるのは、容易なことではないのです。

住宅の二階床組みは、3尺四方のグリッドで組まれた剛床工法の床
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